福島民友新聞家庭版「Me&You」27年10月号に掲載されました

小さな芽~叱るより、抱きしめる~ 理事長 若月 ちよ

新幹線の中での出来事でした。
通路向かいの席に3人の若い女性が座っていました。結婚式の帰りらしく、華やかな服装に、それらしい紙袋が床に置かれていました。
その3人のうちの1人が、2歳半ぐらいの男の子を連れていました。
しばらくの間、3人の女性たちは楽しげにおしゃべりをしていました。そのうち、男の子は飽きたのか、ぐずりはじめ、おしゃべりに夢中なお母さんに何か訴えていました。お母さんはそれに応え、ジュースをカップに注ぎ、男の子に持たせると、またおしゃべりを始めました。
男の子は、何かの拍子にカップを傾けてしまい、床に置かれていた紙袋の中にジュースをこぼしてしまいました。幸い、紙袋の中なので周りに流れず、お母さんたちの素敵なお洋服を汚すこともありませんでした。
すると、それに気づいたお母さんがその子を叱り始めました。男の子は、自分が失敗した恥ずかしさからか、照れ隠しなのか、ふざけた表情で、叱られたことを気にしないような様子を見せていました。しかし、それがお母さんの怒りをより募らせてしまい、より強く叱り始めました。
そこで、男の子は泣き始め、お母さんは「泣かないの!」「うるさい!」「いい加減にしなさい!」を繰り返し、泣き止ませようとしましたが、その子は泣き続けました。
その後、お母さんは泣く子を抱いて座席から離れ、しばらく戻ってきませんでした。

もしかしたら、皆さんも出会ったことがある光景かもしれませんし、体験がある出来事かもしれません。

男の子は疲れていたのでしょう。いつもと違う環境で、彼なりに頑張った1日だったのではないでしょうか。そして、彼が起こしてしまった失敗で、叱られてしまった。彼は、今日1日の頑張りを本当はお母さんに褒めてもらいたかったのではないでしょうか。
叱った後に「今日は1日疲れたんだね、頑張ったよね」と抱きしめてあげたら、男の子の気持ちは治まったのではないでしょうか。

子どもの気持ちを受け止めて、抱きしめてあげることの大切さを感じた出来事でした。

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