日産プレジデント基金Newsletter vol.4に掲載されました

震災から 3 年を迎える福島の子どもの状況とこれからの支援 東日本大震災中央子ども支援センター福島窓口 中鉢博之

東日本大震災の発災より 3 年が経ちました。福島でも沿岸部では津波による被害で、家や学校、あそび場をなくしてしまった地域もありますが、同時に起こった福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染がさらに広範囲に住民の生活環境や子育ての環境に影響しています。

原発周辺地域の子どもたちは、故郷の避難指示は未だ解除されずに、避難先の仮設住宅や見なし仮設住宅等での生活が今でも続いています。また原発から離れており、政府の避難指示を受けていない地域でも、放射線の影響により外で遊ぶことをためらったり、子どもが食べる食材が本当に安心なのか、そんなことを心配しながらの生活が続いています。子どもを守るために、一時的に県外への避難を選択した子育て世代も多くおり、一部福島県に帰還した方もおりますが、まだ帰れずにいる方もたくさんいます。震災とその影響は、まだじわじわと続いているのです。

一方で、福島で暮らす私たちも無力ではありません。子どもの育つ環境を取り戻すために、親・支援者・多くの大人たちが知恵をしぼり、汗をかきました。屋内あそび場の整備、幼稚園や保育所でも自分たちでできるところは除染を進めました。食物と放射線に関しての勉強会も各地で開催されています。県内外の団体によって自然体験や保養のプログラムも行われ、たくさんの子どもたちが参加しています。放射線量が低い地域には、冒険あそび場も設置され、子どもが外でのびのびと遊ぶ様子も再び見られるようになりました。かつて、これだけ子どものあそびや成育環境に目が向けられ、その意味について大人が考えたことはなかったのではないかと思います。
震災・原発事故の影響は、まだこれからも長く続きます。しかし、そのマイナスの影響をプラスに転化する。そのための種があちこちに蒔かれ、芽吹き始めているのです。

「レジリエンス(resilience)」という単語をお聞きになったことはあるでしょうか。「回復力」、「復元力」などとも訳される言葉ですが、困難な体験やトラウマを経たとしても、全てが深刻な PTSDに陥るわけではなく、人が本来持っている回復力を発揮させることによってその困難を乗り越えていくことができるとする考え方です。福島の子どもたち、そして親や支援者が持っている「レジリエンス」をどう活かしていくのか、そのためには、困難や悩みに共に寄り添い、伴走していく支援が今しばらく必要です。福島を、福島の子どもたちを忘れないでほしい。そしてこれからも共に在り続けてほしい。 震災後 3 年を迎える福島からの切なる願いです。

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