ビーンズを知る

子ども・若者はもともと様々なチカラを持っている存在だと考えています。私たちは子ども・若者に寄り添いながら、子どもたちが持っている力が発揮できるような社会となることを日々願って活動しています。

様々な社会背景の中で厳しい現状に置かれ、孤立していく子ども・若者も少なくありません。私たちはこの『社会からの孤立問題』解消に取り組んでいます。

このページでは子ども・若者を取り巻く現状と、私たちの取り組みについて紹介いたします。

『生きにくさを抱える』子ども・若者たち

不登校の子どもたち、貧困の子どもたち、社会との接点を持ちづらい若者たち、ひきこもりの若者たち・・・ビーンズふくしまにつながってくる子ども・若者たちは、様々な状況の中で、生きにくさを抱えています。
その『生きにくさ』とは、『自分だけ』が今この状況にある、という孤立感であり、その中で感じる『自信のなさ』『自己肯定感の持てなさ』なのだと考えます。

私たちは、まず今ここにいる子どもたち・若者たちのありのままを受け止めるところから、始めることが大事だと考えます。「あるべき」姿、ではなく、様々な状況の中で、今まで頑張ってきた自分を認められるようになること、今ここにいる自分を認められるようになること・・・そうした関わりを持つことができる『場』が必要なのです。

『つながれる場』を地域に創る

地域社会の崩壊、そう言われて久しい現在、それが家族の孤立を進め、子ども・若者の生きにくさにつながっていることも、間違いないでしょう。
地域の中に、そのままの子どもたち・若者たちを受け入れてくれる、安心できる場を創ること、つながれる場を創ることが必要だと考えます。それは、多様な学びができる場、様々な人と関わることができる場、安心して失敗ができる場、自信を積み重ねていける場、そしてそれらを通して未来への希望を紡いでいける場です。
地域社会のつながりの再生を目指し、子どもたち・若者たちだけではなく、ひとりひとりが生きやすい社会を創る・・・ビーンズふくしまはそんな活動を続けています。

子どもの孤立

Children orphaned

不登校の子どもたち

(出典)文部科学省『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』令和4年度
福島県教育委員会『学校統計要覧』 令和4年5月1日現在

小学校・中学校の不登校は、2013~2022年にかけて9年連続増加

不登校は、病気や経済的な理由以外で登校しない、登校したくてもできない状況を指します。(文科省の学校基本調査では年間30日以上休んでいる状況)

全国の不登校の児童・生徒数は小中学生合算で30万人、2021年から2022年にかけて、全児童・生徒における割合が小学校で1.3→1.7%、中学校では5.0→5.98%に増加しています。福島県内(2020年調査)では小学校815名(全児童に占める比率0.96%)、中学校2,097名(全生徒に占める比率4.65%)児童・生徒が不登校となっています。

安心して過ごせる居場所を

私たちは団体設立時より不登校の子ども・家族と向き合ってきました。不登校の子どもたちの多くはまじめな子、感受性が豊かな子、考える子、優しい子 です。まわりの期待に応えようとしてしまうことでエネルギーが尽きてしまい動けなくなってしまう子、大人や社会・学校に対する不信感や葛藤の中でわかってもらいたい、寄り添ってもらいたい、そんな気持ちを持っている子もいます。

不登校の原因は様々です。しかし、私たちは原因を探るのではなくこれからどうするかを共に考えます。そして、不登校は病気ではありません。治療の対象ではありません。学校に行っていないことが問題なのではなく、その子にとって安心できる場所がないことが問題なのです。
不登校の子どもたちが自ら望む姿で、安心して過ごせる居場所として、フリースクールビーンズふくしまを運営しています。ここでは仲間や人とのつながり作りや、多様な学びの機会を創出しています。

フリースクールビーンズふくしま

貧困による機会損失と孤立

(出典)厚生労働省『国民生活基礎調査』2019年
(注)
1.相対的貧困率とは,OECDの作成基準に基づき,等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分(貧困線)に満たない世帯員の割合を算出したものを用いて算出。
2.1994年の数値は兵庫県を除いたものである。
3.2015年の数値は熊本県を除いたものである。
4.2018年の数値は旧基準値である。
5.大人とは18歳以上の者,子どもとは17歳以下の者,現役世帯とは世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう。
6.等価可処分所得金額が不詳の世帯員は除く。

6人に1人の子どもが貧困状態

「相対的貧困率」とは、所得の中央値の半分(貧困線)を下回っている人の割合を指しています。

子どもの相対的貧困率は年々上昇傾向にあります。2015年は13.9%、約7人に1人が貧困状態にあることを示しています。特に大人1人で子どもを養育している家庭の相対的貧困率が、2人以上世帯に対し5倍の高さとなっています。2015年の貧困線は 122 万円(名目値)です。

「安心」から、子どもが本来持つ力を回復する

相対貧困率が高いことによる問題の一つに、教育を十分に受ける機会が得られないことがあります。では、学習支援だけで貧困に関する問題が解決するのでしょうか?

貧困世帯の子どもたちと接する中でわかったこと、それは子どもや親が圧倒的に孤立状況にあったことです。まずは寄り添いながら共に不安を解消すること。孤立して追い詰められている生活環境が変わることを経て、少し余裕を持って前に進むことができるのです。

しっかりと段階を踏むことで、子どもたちが本来持っている力、考える力や想像力、課題に取り組む力の回復を、連携機関と協働で支援しています。

生まれた環境が、子どもたちの将来を左右することがないように、必要なものを補いながら子どもと家庭に寄り添っていきます。

アウトリーチ事業子どもの居場所づくり支援事業

若者の孤立

Young people orphaned

若者と自己肯定感・有用感

(出典)内閣府 平成26年版、令和元年版『子ども・若者白書(全体版) 』
(注)
1.各国とも満13~29歳の若者を対象に調査を実施。
2.「自分自身に満足している」は、「次のことがらがあなた自身にどのくらいあてはまりますか。」との問いに対し、「私は、自分自身に満足している」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。
3.「自分には長所がある」は、「次のことがらがあなた自身にどのくらいあてはまりますか。」との問いに対し、「自分には長所があると感じている」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。
4.「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」は、「次のことがらがあなた自身にどのくらいあてはまりますか。」との問いに対し、「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した者の合計。

自分を肯定しにくい、誇りを持ちにくい若者

日本の若者のうち、自分自身に満足している者の割合は45.8%、自分には長所があると思っている者の割合は68.9%で、諸外国と比べて日本の若 者がもっとも低い結果が出ています。また、うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識も低いという結果でした。

各国とも日本とは文化や価値基準が異なるため単純な比較は難しいかもしれませんが、私たちが向き合う若者からもこうした特徴を感じることは少なくありません。

他者の承認が自己肯定や誇りにつながる

例えば若者に「自分の短所を教えてください」と問います。すると、たくさんの答えが出てくきます。反対に、「自分の長所(強み)を教えてください」 と問うと、その答えはなかなか出てきません。これは何故なのでしょうか。短所は今まで生きてくる中でたくさんの人に指摘をされ続けてきました。反対に、長所を伝えられる機会は非常に少ないように思われます。

強み、長所を持たない若者は存在しません。どんな若者でも丁寧に、時間をかけて接していくことで魅力的な長所が見えてきます。様々な体験を仲間と共にすること。やったことに対して周囲から感謝され、認められる。そうした機会が減っていることが、若者の自己肯定感の低下を生んでいるのではないでしょうか。

なぜ、彼らが社会への出にくさを抱えているのか。私たちは、彼らが自信を失うことになる理由のひとつが、『育つ中で「できること」を蓄積できなかった、「できること」を認められてこなかったこと』にあるのではないかと考えています。今できていることを認められず、よりできることを求められ続ける…そこでは、決して自信が育つことはありません。その結果として、「自信がなくて動けない」という状況になってしまっているのではないでしょうか。

まずは安心できる場が重要

感謝されること。認められること。その機会が足りていない若者たちにとって既存の社会は、とてもハードルの高い世界に見えるかもしれません。そこで立ちすくんでしまっては前に進むことができません。

まずは仲間とともに小さな失敗が許され、安心できる場所で様々な体験を積み重ねながら、力を回復することが重要だと考えています。私たちはそのための場づくりをしています。急ぎすぎることなく一人一人のペースに伴走しています。

ユースプレイス事業(県北)みんなの家@ふくしま

就労しにくさを抱えた若者たち

(出典)総務省『労働力調査』
(注)
1.ここでいう若年無業者とは,15~39歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者。
2.平成23年の数値は,岩手県,宮城県及び福島県を除いたものである。
3.平成28年の数値は,算出の基礎となるベンチマーク人口が平成22年国勢調査結果を基準とするものである。

15~39歳の若年無業者は75万人

若年無業者(≒ニート)とは、15~34歳の非労働力人口のうち,家事も通学もしていない者の数を指します。2002年に大きく増加した後、おおむね横ばいで推移しています。なお、15~39歳人口に占める割合は2021年で2.3%となっています。

福島県内の若年無業者は2012年の統計でによると約10,000人、15~34歳人口に占める割合は2.6%です(出典:福島県『平成24年就業構造基本調査』)。全国平均よりも0.3%上回ります。震災からの復旧・復興関連事業により有効求人倍率が上昇しており、県内の雇用状況は良いように思われますが、特定業種への隔たりがあり、求職者のニーズと必ずしもマッチしていないのが現状です。

求職活動をしない理由

総務省『労働力調査(平成29年)』によると、若年無業者が求職活動をしない理由や就業を希望しない理由として、15~19歳では「学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている」が、20代では「病気・けがのため」が最も高い。これら以外に「探したが見つからなかった」や「知識・能力に自信がない」といった理由が全年齢において一定の割合を占めています。

応募活動段階の支援

ハローワークをはじめとして、就業に関する相談機関・支援機関はたくさんありますが、応募活動段階における支援をする機関はなかなかありません。就 労・職業イメージが乏しく、自ら職業の選択ができずに就職活動が滞ることもあります。履歴書の書き方や面接対応に関する不安を持つ方もいれば、生活習慣の 改善やコミュニケーションに関する課題を乗り越えたい方もいます。そうしたニーズを的確に把握し、困りごとに対してきめ細かに対応しています。

定着への支援

若年無業者で何らかの就労経験がある者の最後に就労した期間を調査したところ、3年未満との回答が約60%を占めました(出典:特定非営利活動法人 育て上げネット『2012-2013 若年無業者白書』)。私たちは就労の定着のため、定期的な面談や、職場と家庭とは独立した場での交流などのアフターフォローを行っています。

福島県北・相双地域若者サポートステーション福島県中・県南地域若者サポートステーション

地域における孤立

solitariness within the region

被災状況にある子どもたち

(出典)福島県避難者支援課『県外への避難状況と推移』
(出典)福島県統計課『福島県の推計人口 福島県現住人口調査月報』
(注)
1.各年ともに1月1日時点の人口、世帯数を掲載。
2.平成22年10月1日以前については、人口及び世帯数は国勢調査(総務省)による数値、自然増減数は人口動態調査(厚生労働省)による数値であり、増減数総数から自然増減数を差し引いて算出した数値を社会増減数とした。
3.平成23年10月1日から平成27年1月1日の人口及び世帯数は、平成22年国勢調査確定値に基づく福島県現住人口調査結果。
4.平成27年10月1日の人口及び世帯数は平成27年国勢調査速報値、自然増減数は福島県現住人口調査による数値であり、増減数総数から自然増減数を差し引いて算出した数値を社会増減数とした。
5.平成27年12月1日及び平成28年1月1日の人口及び世帯数は、平成27年国勢調査速報値に基づく福島県現住人口調査結果。
6.令和2年度の5・6月は、新型コロナウイルス対応への負担を考慮し、復興庁が全国避難者数調査・公表を行わなかった。

福島県から県外への避難者約3万人、県内への避難者は約7,500人

東日本大震災と福島第一原発の事故に伴う県内外への避難者数は、2012年5月の164,865人をピークとして減少傾向にあります。県内外ともに毎月1,000人ペースで減ってきましたが、このところ減少カーブは鈍化しています。震災から9年が経過し、避難先での生活が安定したためではないかと考えられます。

さらなる分断

政府は放射線量が高くない元避難区域について避難指示の解除を進めており、元の地域に帰る方も増えています。避難先においては、被災者を対象とした災害公営住宅の提供が進み、住居を新たに購入される方も増えています。仮設住宅のコミュニティから新たなコミュニティへ~多くの人々が再び分かれることとなりました。

福島の被災状況にある子どもたち

福島の家族は震災後、様々な困難の中を生きてきました。先の見えない状況の中で大人たちは不安を抱えながらも、次の選択を自己決定しなければならない状況が続きました。地域や家族は避難により分断されました。福島の子どもたちにとっては、道がなかなか定まらず、不安定なまま翻弄されるような5年間でした。この不安定な状況から心身ともに落ち着きを取り戻し、子どもの持つ本来持つ力を回復するための関わりが必要です。子ども・若者にかかわる支援者の 質・量ともに求められています。

子どもの育ちの環境が回復するためには、さらに数年の期間が必要です。福島で暮らす子どもやその家族が安心して生活できるために行政や子育て支援団体と連携しながら、必要な支援を持続させるための取り組みを実施しています。

震災課題から地域の子育て課題へ

震災を起因として、仮設住宅の中で子どもの居場所作りを進めてきました。その居場所が震災後の子どもたちを支え、コミュニティ再生につながりました。しかし、現在地域においても、子どもの居場所やコミュニティが失われつつあります。そのために地域の中での新たな居場所づくりの模索をしています。

復興交流拠点 みんなの家セカンドふくしま子ども支援センター

世代間の分離

(出典)福島県統計課『福島県の推計人口 福島県現住人口調査月報』
(注)
1.各年ともに1月1日時点の人口、世帯数を掲載。
2.平成22年10月1日以前については、人口及び世帯数は国勢調査(総務省)による数値、自然増減数は人口動態調査(厚生労働省)による数値であり、増減数総数から自然増減数を差し引いて算出した数値を社会増減数とした。
3.平成23年10月1日から平成27年1月1日の人口及び世帯数は、平成22年国勢調査確定値に基づく福島県現住人口調査結果。
4.平成27年10月1日の人口及び世帯数は平成27年国勢調査速報値、自然増減数は福島県現住人口調査による数値であり、増減数総数から自然増減数を差し引いて算出した数値を社会増減数とした。
5.平成27年12月1日及び平成28年1月1日の人口及び世帯数は、平成27年国勢調査速報値に基づく福島県現住人口調査結果。

減少する世帯構成人数

福島県内の人口は減少傾向にあるのに対し、世帯数は増減を繰り返しており、2018年に過去最高値を記録しています。2000年には1世帯の平均構成人数が3.1人でしたが、2023年では2.38人となり、0.7人以上減少しています。県内において、核家族化が進んでいるという傾向が読み取れます。

地域社会のつながりの再生と「サードプレイス」

地域社会のつながりが崩壊している、そんな風に言われて久しい現在、それが家族の孤立化を進め、子ども・若者の生きにくさにつながっていることも、間違いないでしょう。
家族の中に何か「問題」と言われることが起きた時、隣近所や親戚の力を借りることができないまま、いわゆる地域力を得ることができないまま、家族だけでなんとかしなくてはならない状況になってしまいがちな現在の状況があります。
核家族の中で孤立した子育て、その中で変化しない価値観、子どもたち・若者たちだけではなく、その家族も相談できないまま、SOSが出せないまま、家族ごと孤立してしまっているのです。
子ども・若者たちを地域社会で育てる・・・それは、かつて当たり前のこととして行われていました。
地域の中に、家庭(ファーストプレイス)と学校(セカンドプレイス)以外のもう一つの場所、家庭と職場以外のもう一つの場所である、いわゆる『サードプレイス』が必要なのではないでしょうか。『サードプレイス』という、自分の居場所が地域の中にあることで、子どもたち・若者たちは、様々な人たちと様々な経験をし、多様な価値観を学び、そしてそれが、子どもたち・若者たちの『自信の回復』につながっていくのだと思うのです。
今こそ、地域社会のつながりの再生を目指し、子ども・若者たちだけではなく、「ひとりひとりが生きやすい社会を作る」・・・ビーンズふくしまはそんな活動を続けています。

みんなの家@ふくしまユースプレイス事業(県北)